【お題98】海岸漂流物収集家2008/04/21 11:33:29

「海岸漂流物収集家」と言う言葉がどこかに出てくる作品をお待ちしています。
タイトルに限らず、本文中のどこかに1回出てくればOKです。

作品の最後に
(「海岸漂流物収集家」ordered by delphi-san/text by あなたのペンネーム)
とつけてください。これはお題を出した人への礼儀と言うことで。



====================
◇ 波間より

 海岸漂流物収集家が砂を踏みしめ踏みしめやってくる。昨夜は風も強く波も高く夜のうちに潮が満ち、いまは引き始めたところだ。こんな日はたくさんの海岸漂流物が見つかる。流木。珍しい貝がら。大ぶりで綺麗な石。魚の骨。椰子の実。釣り具。外国の言葉が記された何かのパッケージ。そして海水と砂に削られたガラスの破片。

 君は浜辺に打ち寄せる波がちょうど届くあたりでちゃぷちゃぷと海水に洗われている。向こうから歩み寄る海岸漂流物収集家を見て君はため息をつく。なんという姿だろう。遙か東の空にぽかりぽかりと浮かぶ雲を真っ赤に染めていままさに日がのぼらんとしている。その朝焼けを背に、彼女のシルエットは幻想的な影絵のようにも見える。気がついてくれるだろうか。気がついて拾ってくれるだろうか。

 海岸漂流物収集家が歩みを止めて何かを拾う。ああ違う。そんなんじゃなくてこっちに来てよ。君は1日の最初の光を浴びてきらめき始めた波の下で身を揺する。水を通して見る景色はゆがんで見えて、海岸漂流物収集家が突然消えて見えなくなったりもする。見えたかと思うと、その手には美しく角の丸まった大きなガラス片が見えたりする。

 そして君は悲しくなる。ああだめだ。あんなに立派なガラス片を手に入れたらもう今日はおしまいにしてしまうに違いない。事実見ていると海岸漂流物収集家は流木を拾い始める。鹿の角のような流木。呪われた生き物の顔のような流木。ずんぐりした仏像のような流木。骨のように白い流木。しかもだんだん遠ざかってしまう。

 その時風が吹き、海岸漂流物収集家の帽子がふわりと舞い上がり、こちらへ飛んでくる。君は動転する。何も見えない。どこへ行った? 見失ってしまった。長い長い距離を越えてはるばるここまでやってきたのに。やっと会えるところまでやってきたのに! でももちろん心配することはない。君の目が見えないのは帽子のせいなのだから。そして間もなく帽子は上がるだろう。そして海岸漂流物収集家は君に気づくだろう。

 君を拾い上げたら彼女は彼女の国の言葉で「あら、子犬みたいね」と言い、そして君をペンダントにするために胸ポケットに収めるだろう。

(「海岸漂流物収集家」ordered by delphi-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://hiro17911.asablo.jp/blog/2008/04/21/3229450/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。