140字のSudden Fiction Projectについて2011/05/05 15:27:50

2011年3月11日の震災直後に立ち上げたプロジェクトです。

東日本大震災での記憶が新しいですが、阪神淡路大震災でも、地下鉄サリン事件でも、
911の同時多発テロでも体験したように、大きな天災や事件・事故のあと、
マスメディアをつらい映像や情報が埋め尽くすことがあります。

そんな時、子供たちが無防備にその映像や情報にさらされる状態はできれば避けたいものです。
かといって、他の番組が流れていればそれを見せておけばいいというものでもないでしょう。
そういう時こそ、ふだん以上に子どもたちと保護者さんの接点があることが望ましいと考えられます。

子どもたちに保護者が読んであげるごくごく短いお話を創作するプロジェクト
「140字のSudden Fiction Project」は、そんなことを考えて立ち上げました。
2011年3月14日、Twitterを使ってスタートしました。

過去の作品はTogetterを使ってまとめていますので、リンク先からご覧ください。

●140字のSudden Fiction Project(1)
 http://togetter.com/li/113010

●140字のSudden Fiction Project(2)
 http://togetter.com/li/116192

●140字のSudden Fiction Project(3)
 http://togetter.com/li/124756

140字のSFPお題インデックス2011/05/05 15:40:28

140字のSudden Fictionを書くぞ!という方にずらりと
お題をご用意しました。自由にご利用ください。
「子どもたちと保護者のための140字のお話」
という趣旨をご理解いただいた上でTwitterに書く場合は
ぜひハッシュタグ「#140SFP」をつけてどうぞ。

140字のSudden Fictionの趣旨に関する詳細は下記エントリをご覧ください。
●140字のSudden Fiction Projectについて
 http://hiro17911.asablo.jp/blog/2011/05/05/5846732

=====140字のSudden Fiction Projectお題インデックス=====

【1.カーテン】
【2.リモコン】
【3.駅のホーム】
【4. 鈴木さん】
【5.ウツボ】
【6.ご不在連絡票】
【7.火星の石】
【8.レセプション】
【9.学習塾】
【10.廃墟】
【11.おじいちゃんの帽子】
【12.骨】
【13.ドライフルーツ】
【14.影】
【15.いかさま】
【16.豚の貯金箱】
【17.ハングル】
【18.生え抜き】
【19.ハレルヤ】
【20.ワールドカップ】
【21.カウントダウン】
【22.天国と地獄】
【23.サイコロ】
【24.キャベツ】
【25.大晦日】
【26.正月晴れ】
【27.色気とセクシー】
【28.無意識の中の意識】
【29.恋】
【30.門松】
【31.あいうえお】
【32.5円玉】
【33.単館ロードショー】
【34.流星群】
【35.リクルートスーツ】
【36.七草粥】
【37.急募!「お題」】
【38.骨董女】
【39.198円】
【40.目覚まし時計】
【41.三谷幸喜】
【42.蟻】
【43.ポストイット】
【44.帰り道】
【45.お題】
【46.MJQ】
【47.僕はなぜ急ぐのかだれか知らないか?】
【48.熱帯の雪】
【49.偽計と偽装】
【50.空からの手紙】
【51.パスワード】
【52.鏡と扉】
【53.ロスタイム】
【54.兄弟】
【55.おめでとう】
【56.サニーサイド】
【57.スパイス】
【58.名刺】
【59.彼しか知らない、彼女のほくろ。】
【60.転生】
【61.そこをなんとか】
【62.リンク】
【63.シャコンヌ】
【64.黒点】
【65.踏み台】
【66.飲料水】
【67.視力】
【68.残り火】
【69.シェラザード】
【70.間違い電話】
【71.花嫁への言葉】
【72.Wブッキング】
【73.宝箱と金曜日】
【74.ももくる春】
【75.お姉ちゃん】
【76.空心菜】
【77.雨の日に】
【78.嬉しい!】
【79.凍りついた海を駆ける】
【80.噴水】
【81.ブックバトン】
【82.寝言】
【83.リセット】
【84.太平洋戦争/米国敗戦】
【85.2009 屋久島での出来事】
【86.ウンコマン】
【87.診断書】
【88.ため息】
【89.お誕生日】
【90.お楽しみ会】
【91.殺人事件後】
【92.安本丹】
【93.カタコンベ】
【94.ごほうび】
【95.桜】
【96.お好み焼きをおかずに白米を食べる理由】
【97.左手】
【98.海岸漂流物収集家】
【99.みずみずしい】
【100.魔女】
【101.毛布】by sachikotravelさん
【102.カメムシ】by とらこさん
【103.足の裏】by とらこさん
【104. 待ち遠しい時間】by chiyoさん
【105. 三毛猫】by chiyoさん
【106.モップ犬】 by chiyoさん
【107. 天国】by chiyoさん
【108.カラス】by とらこさん
【109.春の庭】by とらこさん
【110.木綿のワンピース】
【111.麦わら帽子の少年】
【112.祝祭】
【113.鳥かご】
【114.チューブ】
【115.領収書】
【116.手放す】
【117.朝の挨拶】
【118.缶詰】
【119.けし】
【120.卒業アルバム】
【121.再会】
【122.太鼓】
【123.メタモルフォーゼ】
【124.アルミホイル】
【125.ペン先】
【126.証明写真】
【127.学園祭】
【128.好き嫌い】
【129.竹の花】
【130.のりたま】
【131.ラミネート】
【132.うたたね】
【133.胃カメラ】
【134.雲母】
【135.爪】
【136.ブラジル】
【137.ゴッホの耳】
【138.ペットボトル】
【139.咳止め】
【140.聖職者】
【141.割引】
【142.傘】
【143.椎茸】
【144.サムライ】
【145.親愛なる指導者】
【146.胡蝶蘭】
【147.水辺】
【148.半夏生】
【149.大人】
【150.首都高3号線】
【151.A4】
【152.夜更かし】
【153.シマウマ】
【154.追跡者】
【155.働く】
【156.結婚】
【157.延長戦】
【158.使い捨て】
【159.ダンス】
【160.エクセルシオールカフェ】
【161.時効】
【162.レース編み】
【163.異端】
【164.underground】
【165.海風】
【166.後悔】
【167.チョコレート】
【168.水の戯れ】
【169.ユキヒョウ】
【170.首すじ】
【171.印刷屋】
【172.間宮海峡】
【173.交換】
【174.砂漠に降る雪】
【175.貝紫】
【176.最後の審判】
【177.12色】
【178.核実験】
【179.中学受験】
【180.嵐】
【181.短波】
【182.刹那】
【183.美術館の泥棒】
【184.督促期限】
【185.合格通知】
【186.ヒップホップ】
【187.抽き出し】
【188.憲法改正だあ?】
【189.美しい国】
【190.雨がやんだら】
【191.吸血鬼になりたかったのに】
【192.鎖骨】
【193.ねずみ男】
【194.夢遊病】
【195.右脳】
【196.居候】
【197.西瓜】
【198.貿易風】
【199.詩人の恋】
【200.ぼだいじゅ】
【201.二十歳】
【202.mixi】
【203.コミュニティ】
【204.日記】
【205.和音】
【206.いつものやつ】
【207.8月】
【208.Missing Piece】
【209.思いやり】
【210.名残】
【211.悪口】
【212.天使のお告げ】
【213.飾らず自己をさらけ出す】
【214.泣き虫のPちゃんへ】

====================

140字のSFP/お題についての解説2011/05/05 16:21:51

140字のSudden Fiction Projectにいちはやく賛同して、最も精力的な書き手として
ハイペースで作品を発表したのは劇作家の阿藤智恵(@atohchie)さんでした。

阿藤さんはこのブログに紹介している初期の100のお題をあっという間に消化してしまい、
mixi内で展開されている第2期(ちなみに第3期まで終了)のお題も使いたいと希望され、
オリジナルのSFPと140SFPで番号に不整合が起こるものについて番号を振り直してくださいました。
(その後さらにhiro17911も手を加え全212題としています)。

ということで、140字のSFPについては、以下の連番でお題を公開いたします。
参加ご希望の方はこちらをご利用ください。

お題提供者のお名前が「by〜」とついているものは、
Twitter上で140字のSFPが始まって以降、新たに追加されたお題です。

これを元々のSFPのお題の間に挟み込んだ形で新たに番号が振られています。
元々のSFPには既に通算311ものお題をいただいています(番外を加えるともっと多い)。

え? 従来のSFPの方の作品も読みたいって?
う……。それにはいささか時間がかかってしまいそうです。す、すみません。

◇ アザラシは落ち葉のように眠る2011/05/07 20:09:00

 アザラシは落ち葉のように眠る。
 ざぶりゆらゆら、くるりんくるりん。
 ラクラク浮かんだ兄さんは大水槽の中、
 してやったりと笑みを浮かべるの。

 羽根のように短い腕をいっぱいに広げ
 おもむろに水槽の底に潜るアザラシ少年。
 小さくくるりと水中にらせんを描き
 薔薇の香さえも漂わせつつ。

 脳みその使い道をみんなは知らない。
 喜んで生クリーム占いだって信じる奴らさ。
 うんざりするぜ、と観客を小馬鹿にする兄は、
 にんまり笑って見物料を巻き上げるのだ。

 熱湯の中、蒸発してしまった兄さんを、
 夢遊病のように求めるわたしの望みは
 流浪の一族をいま一度旅に連れ出すこと。
 流浪の一族の遺骨をただ旅に連れ出すこと。
 
(「生クリーム占い」ordered by たいとう-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)

◇ ぼくが今ここにいる意味2011/05/29 08:35:04

 晴れた日は明るくなる頃に目を覚ます。明るくなるから目を覚ますのか、小鳥たちが活動を開始する気配に目を覚ますのか。とにかくそろそろ太陽が顔を出す直前に目を覚ます。洗面器に少し水を張り顔を洗った水で口をすすいでうがいもする。その水は表の菜園にまく。どんなに僅かな水も貴重だ。赤い首を覗かせ始めたラディッシュを掘り出し、丁寧に布で拭って塩をふってかじる。

 簡単な朝食を終えると家族に声をかけて表に出る。行ってらっしゃいとかすかに聞こえた気がする。歩いて行くと何人か顔見知りの人に会い、おはようございますと挨拶をする。みんな日に焼けて、口を開けると歯が白く、総じてまぶしそうな顔つきをしている。今日はCの11を探そう。Cの11というのはぼくが勝手につけた区画番号で他の人には通用しない。たまに手伝いにきてくれる学生たちは理解してくれる。

 Cの11はかつて商店街だった一角だ。明らかに元々この場所にあったとおぼしきものもたくさん見つかるが、もちろんそれだけではない。あの日、この場所は何度も潮に洗われ、山の麓に建ち並ぶ住宅地にあったものも、海岸だった場所にあったものも、遥か沖合にあったものも、それどころか、どこか他の村や町にあったものも、何もかもが呑み込まれ混ぜ合わされそして出鱈目にぶちまけられたのだ。

 一つの区画は10メートル四方に決めている。理由はそんなにない。何も見逃さないように丹念に見て回るとそれで一日終わってしまう、そのくらいのサイズだ。始めの頃は当てもなく探しまわるしかなかった。家を中心に浜辺と高台の麓を何度も往復しながら、目につくものを動かし、物陰を覗き込み、覆いかぶさったものをとりのけた。

 家から1キロ近く離れたところで時計を見つけた時には息が止まるかと思った。それは娘がまだ幼稚園に通っていた頃、娘からという名目で誕生日に家人からプレゼントされたものだった。けれどもそのようなやり方ではどうしても見落としが出て来ることにも気づかされた。時計にしたってたまたま転んだ指先に、泥の中の固いものが当たったから見つけたのだ。転ばなかったら見つけられなかった。

 そう気づいて、その日からやり方を変えることにした。区画を決めて順番に虱潰しに探す。1メートル角の木枠をこしらえ、それを運び、その日探すエリアに持ち込む。平らな場所には木枠を置き、木枠の中を納得行くまで探す。建物やその残骸が形をとどめているところもできるだけ枠単位で納得行くまで探す。

 これを100回繰り返すと1日が終わる。肉体的にもハードだが、精神的にもかなりこたえる。たくさんの人のたくさんの思い出に否応なく触れることになるからだ。食器類にはなぜかはっとさせられる。箸置きを見るとつらくなるのは妻が箸置きを集めていたことを知っているからだろう。ランドセルや教科書のたぐいも胸がつぶれそうになるが、実際には子どもたちはもうとっくに小学校を卒業している。下の息子だってこの春高校に入るはずだった。

 そういったものを見つけても何もできない。できるのは、持ち主が無事でありますようにと祈ることだけだ。たまたまこれがここにあることを知らないから、知っていても持って行けなかったから、ここに放置されているのだろうと。そして、もし不幸にも命を落としているのなら、どうか安らかに眠りますように。君のランドセルはおじさんが泥を拭っておいたからね。

 家族の元を離れて何年にもなる。正直な話、あの日までは戻るつもりもなかった。けれどもニュースで故郷が失われて行く映像を見て、たまらなくなって戻ってきた。避難所を回り、おびただしい数の遺体を確認し、家族がどこにもいないことを知って町に戻った。自分の家の在り処を探すことさえままならなかった。道も、郵便局も、角の果物屋も、何の手がかりもないのだ。そこが自分の町なのかどうかすら確信を持てなかった。ようやく自分の家の場所を探し当てた時には大声を上げて泣いた。あたりのものを動かし、泥を掘り、その場所には家族がいないことを確認するのに1週間かかった。

 残骸を利用して小屋をつくりその場に住み着くことにした。同じようなことをしている人が何人もいて知り合いになり、お互いに助け合って暮すようになった。この数年間、ぼくは山中でひとりサバイバル生活をしていた。だから一人で生き抜くことは何とかできる。掘り返すものの中には家庭園芸用の野菜類の種などもあり、ありがたくいただいて栽培している。そうして遅ればせながら捜索を始めた。こんな生活をいつまでも続けられないことはわかっている。けれどいまぼくにはこうすることしかできない。今日、それを確信した。

 Cの11を終えようとした時、一冊のよれよれの冊子が目に入った。どことなく見覚えがあったので手に取ると、それはぼくが卒業した年の高校の生徒会誌だった。これがぼくのものか同級生のものかは分からない。けれどまぎれもなくあの年の生徒会誌だった。水にぬれ、ごわごわになったページをめくり、目次に自分の名前を見つけて思い出した。すっかり忘れていたが、当時ぼくは生徒会誌にふざけたエッセイとも小説ともつかぬものを投稿し、それが掲載されていたのだ。

 読むに耐えない文章のおしまいの一節にこうあった。「おれはどうもスポーツでも音楽でもたいしたプレイヤーにはなれそうもない。でもおれはめざす! ベストプレイヤーをめざす! 一文字変えて“祈る人”のプレイヤーだっ!」

 当時は気の利いたことを書いたつもりだったんだろうが、なんとも冴えないダジャレに過ぎない。でもそこには、いまのぼくにできることが書かれていた。ぼくは恐ろしく無力だけど、毎日ひと区画をあらためて回り、そこで見つかったもの一つ一つに祈りを捧げることはできる。無事を祈り、平安を祈り、ものごとが少しでもよくなるようにと祈ることができる。どのような形であれ家族と再会するまで、それがぼくが今ここにいる意味だ。

(「生徒会誌」ordered by こあ-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)