「リメンバーABC」#00062004/08/25 00:00:00

2004年7月16日、青山ブックセンター(以下、ABC)が消滅する。
 
事前には何の予告もなく当日になって突然の閉店告知。
民衆は茫然とし、嘘だろ?と叫び、あわてふためきうろたえ騒ぐ。
後世になって歴史家たちはこの事件を「ABCショック」と呼ぶわけだが、
今日はこの事件をめぐってお話しするとしよう。
 
いまとなっては確かにABCのような品揃えの書店はあちこちにある。
けれど、少なくともある世代以上の(首都圏の)本好きにとってABCは
アート系の本、写真集、サブカルチャー、マニアックな人文書、趣味的な書籍……
といったものを象徴する存在だったことは間違いないだろう。早い話、そういった
ジャンルの本とABCで初めて出会い、「世の中にはこんな本があるんだ!」と
興奮したことがある人もたくさんいるはずだ。
 
「あの手の本を探すならABC」と決めていた人もいるだろう。
「いつかABCで大金を使うのが夢だった」なんて人もいるだろう。
文部(科学)省的「健全な読書」からかけ離れた隠微な本をABCで漁るのが秘かな
楽しみだった、という人もいることだろう。
それだけじゃない。
六本木で夜遊びして店から出て地下鉄もまだ走らぬ時間帯、ぶらりと立ち寄り
本の森に迷い込んだ人もいるはずだ。
 
そんな(ある世代以上の?)本好きにとってABCの消滅は、大袈裟に言えば
精神的支柱が失われるような喪失感があったことと思う。
「もう一度行きたかった」「そんなことなら買いあさっておけば良かった」
「どうしてオレに一声かけてくれなかったんだ、水くせえじゃねえか」etcetc...
 
そして苦い教訓をかみしめる。
つぶれてほしくない店ではお金を使おう。
なくなってほしくない商品は金を払って買おう。
消滅してからいくら嘆いてもどうしようもないのだから。
ABCショックを、この喪失感忘れずにおこう。
リメンバーABC! リメンバーABC!

「続・リメンバーABC」#00072004/08/25 00:00:00

「リメンバーABC」をひっぱることにする。
実は2004年8月25日付の記事で、青山ブックセンター(ABC)の再開が報じられて
いるのだ。支援企業の手によって青山本店と六本木店は営業を再開、広尾店も名前
こそ、「流水書房」に替えるものの営業を再開することになるということだ。
 
ただしこれらの再開組がどこまで以前の「ABC性」を継続できるのか、
これはまだわからない。ただはっきり言えるのは「リメンバーABC」のスタンスで
考えると、「ABC性を保つ上で我々にはできることがある」ということだ。
 
時々再開したABCに時々足を運んでみて、それぞれが信じる「ABC的な本」を購入
すればABC性を保てるかもしれない、というわけだ。少なくとも、全国どこにでも
ある、金太郎飴のような個性のない巨大書店にしてしまわないためにも。
 
それは何もABCだけの話ではない。
全国どこでも、全世界どこでも、身近なお気に入りの本屋さんを守るために、
ぼくらにはささやかだけど、できることがある。
その本屋に置いていて欲しいと期待する本を時々買うこと。
もし欲しい本がなければリクエストして自分の好みの本屋に「鍛え上げる」こと。
なんなら、万引きするやつをつかまえて、突き出してもいい。
 
そしてそして。
この話は本屋に限った話ですらない。
ぼくらの身近な八百屋さん、雑貨屋さん、定食屋さんやレストラン、酒屋さんや
居酒屋さん、屋台、いっぱい飲み屋、ショットバー、アイリッシュパブ、
ああもう何だかわからないけれど、気に入った店を守るために、ぼくらは飲んで
飲んで飲みまくらなければならないのである。(違)
 
※ABC閉店の理由は単純に書店の売り上げの問題だけではなかったようですが、
 いずれにしても十分に採算がとれていれば閉店の憂き目には合わなかったで
 あろうということで、リメンバーABC。
※『だれが「本」を殺すのか』(佐野眞一/新潮文庫)で本をめぐる
 状況について徹底的な取材と詳細な分析がなされています。
 「本が好き」「本屋で過ごす時間が好き」という人にとってはかなり響く
 一冊なのでオススメです。