【お題71】花嫁への言葉2008/02/06 12:55:16

「花嫁への言葉」と言う言葉がどこかに出てくる作品をお待ちしています。
タイトルに限らず、本文中のどこかに1回出てくればOKです。

作品の最後に
(「花嫁への言葉」ordered by hell“o”boy-san/text by あなたのペンネーム)
とつけてください。これはお題を出した人への礼儀と言うことで。



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◇ 花嫁への言葉

  <誓いの言葉>
 遙か昔華やかな羽根の話だ。
 夏が長く永遠の流れとなるように。
 夜はいつでも良き予感に満ちている。
 目がかすれ飯に困る日が来たって
 平然と、ときにはへらへらやり過ごそう。
 のびのびと二人の時はノリノリでいこう。
 転げ回って声高く笑いふざけあおう。
 とんでもない、途方もなくとびっきりの
 バター頭のバカモノと罵倒されようともね。


  <お祝い騒動>
 ハッピーな発表があるのです
 なかよしの仲居が言いました。
 良い感じの酔いに身を任せ
 珍しいめざしにめろめろ
 平静を装う兵士たちも
 乗る船逃し飲む農夫たちも
 幸運を呼ぶ耕耘機で畑を耕す
 富み栄えるとみせかけて
 バンザイ気分のおばんざい


  <よきことばたち>
 春の箱をのぞいてごらん。花の橋から見える蓮。
 夏に流す涙はきっと、七つの名を持つ波となる。
 酔い心地の予期せぬ寄り道もまた良しとの予言。
 眩暈を呼ぶめくるめくメッセージは恵みの瞑想。
 ヘルからヘローへと経る部屋には平和の壁画を。
 ノリノリに乗せる能力はノルウェーにまで伸び、
 孤高の人さえ子煩悩にする、弧を描く恋の呼吸。
 飛ぶ鳥は時をとらえとこしえに尊い富を届ける。
 倍の喜びをバスに乗せ、晩餐の場にはバラ一輪。


(「花嫁への言葉」ordered by hell“o”boy-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)

【お題72】Wブッキング2008/02/06 12:59:33

「Wブッキング」と言う言葉がどこかに出てくる作品をお待ちしています。
タイトルに限らず、本文中のどこかに1回出てくればOKです。

作品の最後に
(「Wブッキング」ordered by ariestom-san/text by あなたのペンネーム)
とつけてください。これはお題を出した人への礼儀と言うことで。




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◇ Wブッキング

 例えば新幹線の指定席に座っていても、飛行機の座席にかけていても、誰かが「そこ、私の席です」と言ってくるのではないかと思うと不安でならない。座席指定のあるコンサートや舞台の観客席でも終演までどうにも気が休まらない。実際にそんな目にあったことがあるわけではない。いつも最初から最後まで誰に邪魔されるわけでもなくひとりで席にとどまっている。にもかかわらずその不安から逃れることが出来ない。

 先日なじみの店でマスターと雑談になって、そんな話をしているとマスターがにやにや笑いながら「ああ。ぴったりなカクテルがあるんだけどなあ。でも趣味悪いかもなあ」と言った。こっちも酒が入っているのでついつい「なになに? 思わせぶりなこと言ってないで出してちょうだいよ」とせっついた。「そうですか?」と言いながらマスターが勧めてくれた酒を飲んだ。なるほどそれはいささか刺激が強すぎる酒だった。

     *     *     *

 わたしの仕事は座席ともチケットとも予約とも関係ない。電機メーカーの研究所に勤める研究員だ。朝は早くから席について仕事のことを考える。この仕事は自分に合っていると思う。前日まで進めた考えを、翌朝席に着くなり復活させてあれこれ考えることが楽しくて仕方ない。

「おはよう。今日も早いね」
 声をかけられて振り向くが、知らない男だ。用心して返事する。
「おはようございます」
「論文読んだよ」男は丸めた雑誌で左の掌を打った。「これで博士号は間違いなしだな」
「どうでしょう」論文まで読むと言うことはかなり専門的な知識の持ち主だ。でも社内の人間には見えない。どうやって入ってきたのだろう。こんな時間に。「まだ提出したばかりで何も予定は立っていません」
「そりゃそうでしょうとも」男は細かく何度もうなずきながら同意し、一枚の紙を取りだし差し出してくる。「ではこれをご予定に書き加えてくださいな。いいお返事お待ちしていますよ」

 紙に目を落とすと、そこには面接の日時が書かれていた。最初何が書いてあるのかわけがわからなかった。知らない会社の名前と、提供するポストの権限や年俸が記されている。これはヘッドハンティングだ! ようやくそう気づいて、なぜそんな男がこんなところに? と顔を上げるともう男の姿はなかった。

 こんな紙は部員が出社してくる前に片づけねばならない。慌ててフォルダーにはさんでカバンにしまいつつ、日時と場所だけ記憶しておいてシステムノートを開く。そして手が止まる。同じ日時に、昇級をかけた社内の面談があることに気づいたのだ。そこへ部長が機嫌良さそうに登場する。

「おはよう。今日も早いね。論文読んだよ。これで博士号は間違いなしだな」
 かろうじて笑みを浮かべるだけで何も返事できずにいると、部長はどんどん近づいてきて不意に目の前でしゃがみ込む。
「おや。なんだこの紙は。君が落としたのか? どうした。大丈夫かね、顔色が悪いぞ」

     *     *     *

「大丈夫ですか? 顔色が悪いですが」マスターの声に我に返る。「すみません。やっぱり趣味が悪かったですかね」
「たまらないな。やめてほしいな、こういうのは」大きくあえいで息を整える。「わかるよ。このカクテルの名前はWブッキングだろう?」
「いえいえ」マスターが言う。「これはフルーツ・バスケットです」

(「Wブッキング」ordered by ariestom-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)