【お題50】空からの手紙2008/01/15 00:18:33

「空からの手紙」と言う言葉がどこかに出てくる作品をお待ちしています。
タイトルに限らず、本文中のどこかに1回出てくればOKです。

作品の最後に
(「空からの手紙」ordered by helloboy-san/text by あなたのペンネーム)
とつけてください。これはお題を出した人への礼儀と言うことで。




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◇ 空からの手紙

 井上平太について調べれば調べるほど奇妙なことが次から次に出てくる。まず彼は日本においてはまったくうだつの上がらない冴えない中年男に過ぎなかった。それがネセメアに訪れて以降、人が変わったように精力的になり、性格もとても同一人物とは思えないくらい明るく積極的になり、事実また人望も集めるようになっていた。日本において井上がリーダーシップを発揮するなんてほとんど考えられもしなかったことだ。

 ところがここでは違ったようだ。いまこうして訪ね歩いて、当時を知る人を探していても、井上平太の名前を出すとそれだけで村人たちの対応が変わってくる。話を聞く限りほぼ全員が井上のことを知っており、それも極めて重要な人物だと認識されているらしいのだ。ある村では、我々が井上の知り合いだとわかっただけでいったいどこからこんなに出てきたのかというほどの群衆がわらわらと湧いてきて完全に取り囲まれた。身の危険を感じるほどだったが、後からわかったことは、彼らには井上の知人を傷つける気なんてあるわけがなかった。なにしろ井上はネセメアにおいて、ほぼ神に等しいと言っていい崇拝を受けていたのだから。

 その証拠を示すものがあるというので、ある村で我々はその証拠を見せてもらうことにした。村の呪い師の家に連れて行かれ、そこで何かの木の根を搾った飲み物を飲まされ、さんざん霊力を自慢された後で我々はその証拠を見せてもらった。そこには数枚の英語で書かれたビラがあった。ビラにはこのエリアに潜伏するテロリストへ降伏を呼びかけるメッセージが書かれていた。我々が顔を見合わせていると、呪い師は突如、長々とした話を物語り始めた。それはネセメアでは採集したことのないような不思議で陰影に飛んだ物語だった。

 語り終えると呪い師は言った。その手紙に書かれている物語だ、と。イノウエはそれを読むことができ、我々に伝えることができたのだと。空からの手紙には大切なことが書かれているのだと。

(「空からの手紙」ordered by helloboy-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)

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