【お題10】廃墟2007/12/06 00:33:16

「廃墟」と言う言葉がどこかに出てくる作品をお待ちしています。
タイトルに限らず、本文中のどこかに1回出てくればOKです。

作品の最後に
(「廃墟」ordered by delphi-san/text by あなたのペンネーム)
とつけてください。これはお題を出した人への礼儀と言うことで。



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◇ 舞台写真

 今朝、確かに彼女と目があった。
 間違いなく目があった。
 そう思いながら目をさまし、
 しばらく動悸が止まらない。
 子どものころから同じ夢を見ている。
 場面も違う、展開も違う。でも主題は常に同じ。

 どうして廃墟の写真ばかり撮るのかとよく聞かれる。廃墟を訪ねるのが好きなのか。イエス。廃墟なら古代のものでも近年の工場跡地でも何でもいいのか。ほぼイエス。他の主題より廃墟の方が魅力的なのか。部分的にイエス。いまは廃墟を撮ること以外考えられない。先輩などからはやめた方がいいと諭されることもある。それはありふれた題材だ。アマチュアが好んで取り上げるものであって、そこに突っ込んでいっても大した実りがあるとは思えない、深めようがない、などなど。

 でもそういうことじゃないんだな。
 子どものころから繰り返し見る夢がその答だ。
 テーマが深まるかどうかなど問題ではない。

 いまのところ写真に人物は登場しない。
 けれど、どの写真も本当は
 そこに人物がいるべきなのだと思いながら撮っている。
 夢に出てくる裸身の女性。
 長い夢の終わり頃に現れる女性。
 彼女は廃墟の中にたたずんでいる、いつも。
 いろいろな土地の、
 いろいろな廃墟に。

 写真を撮り始めてから何度か、
 ここは彼女がいた場所だと確信した場所がある。
 写真に彼女はいない。でもそこは彼女がいた場所なのだ。
 一度だけモデルを頼んで廃墟に立たせたことがある。
 でもそれはファインダーを覗いた瞬間から違うとわかった。
 だからモデルが入る前に撮った写真が、
 その廃墟での作品となった。

 夢の中の彼女はいつでも必ず同じポーズでたたずんでいる。
 昔は背中しか見えなかったのが、
 少しずつ角度を変え、最近ではほとんど正面を向いている。
 目があったと感じるほどに。
 間もなく会えるはずだ。
 本当に会えるはずだ。
 だからそれまでは誰もいない廃墟の写真を撮る。
 ほんの少し前まで彼女がいたはずの廃墟の写真を撮り続ける。
 登場人物が去った舞台だけの写真を。

(「廃墟」ordered by delphi-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)

明日から作品もアップし始めます2007/12/06 13:31:22

ゆるゆると始動中のSudden Fiction Projectですが、

お題が10個たまりましたので、

明日から作品も1日1編ペースでアップします。

ま、仕事が忙しくなったら更新し忘れることもあるかもしれません。

そんな時はご容赦を。

作品へのご意見・ご感想、大歓迎です。

どしどし書き込んでやってください。

出版関係者からのお声掛けもお待ちしています(笑)。

手に取って読める書籍にしたい!

という欲が湧いてきていますので、アドバイスのある方、

いろいろ教えてやってください。

ところで一昨日あたりから改行がちゃんと反映されないという

トラブルに見舞われています。読みづらかったらアサブロのせいですので、

どうぞご容赦ください(勝手に改行をなくしちゃうんですよ。ぷんぷん)。