【お題9】学習塾 ― 2007/12/05 08:16:36
「ハレルヤ」と言う言葉がどこかに出てくる作品をお待ちしています。
タイトルに限らず、本文中のどこかに1回出てくればOKです。
作品の最後に
(「学習塾」ordered by yasu-san/text by あなたのペンネーム)
とつけてください。これはお題を出した人への礼儀と言うことで。
====================
◇ 三択問題
学習塾が小学校に言った。「なんていうか、おれたち本当に必要なのかな、二つもさ?」
「それって」小学校は警戒しながら答える。「どういう意味?」
「どういう意味も何も、可哀想じゃん、子どもたち。朝早くから学校行ってさ、一日授業やら何やらあってさ、それが終わっただけで十分集中力を使ってると思うんだよね。」学習塾は一言一言確かめるように口にする。「それが今度は夕方から塾だよ。そんなのどっちか一つでいいって」
「でもどっちかひとつ選べって言われたら」小学校を上目遣いに学習塾を見てそう言う。「みんなは塾を選ぶんだろ?」
「おいおいおいおい」学習塾は両手を大きく広げて肩をすくめる。「そりゃあないだろ。っていうかお前がそれを言っちゃあダメだろ。しっかりしろよおい」
「だって、みんな結局ペーパーテストの学力のことしか考えてないわけだし」
「だからさ。そうやってきょろきょろするからダメなんだろ? お前はお前でどーんと構えて、ペーパーテストの結果に一喜一憂するような家庭には来てもらわなくていい、くらいのことを言い放つべきなんだよ堂々と。だろ? そうすりゃその考え方についてくる人もいるって」
「いないよそんなの。ぼくにはわかっているんだ」小学校は暗い目つきをして言う。「ほんの数年前までゆとりが大事だゆとりこそ人生だと言っていたやつらはいまどこに行ったんだ?」
「まあまあ」学習塾は小学校の肩をポンポンと叩き激励する。「わかる人にはわかってるって。おれは応援しているんだぜ、結構お前のことを。というよりお前が頑張ってくれなきゃ張り合いもないしな」
学習塾と小学校は別れると即座に仲間に連絡を取り合う。学習塾は「小学校の奴、めげてるフリをしていたけどあれは芝居だな。もっと追い込まなきゃ。学力向上のニーズをもっとPRするんだ」と言う。小学校は「学習塾はほとんど勝ったも同然というつもりでいる。あいつらが大好きなマーケティング・データで、あいつらの足元に揺さぶりをかけるんだ。入試突破に最重要の力点を置いた児童が入学後に受動的にしか振る舞えないという事例を徹底的に掘り起こすんだ」
そのころどうしようもないど田舎の素寒貧の家庭の偏差値最低のクソガキは今年二頭目の鹿を仕留めて、刃物で胸を裂き心臓をつかみ大動脈の血流を止め、くるくると毛皮をはぎとり、運びやすいサイズまでばらばらに解体し、前近代的な迷信の作法にのっとって狩りの神様に祈りと獲物の一部を捧げ、毛皮と肉をまとめると山道を下るのに扱いやすいように天秤につるし里に下りる。死に際の鹿に引っかけられた傷を手当するための野草を摘み、ついでに鍋に入れる山菜も必要なだけ集める。「ケガなんかしやがって!」と病気の父親に罵倒されることはわかりつつ、鍋料理のことを考えると唾がわく。鍋料理の味付けには自信があるのだ。
さてここで問題です。切れ者の学習塾と、処世術に長けた小学校と、どうしようもないクソガキの中からひとりだけ、あなたがいざというときに頼れそうな友だちを選ぶとしたら誰を選びますか?
(「学習塾」ordered by yasu-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)
タイトルに限らず、本文中のどこかに1回出てくればOKです。
作品の最後に
(「学習塾」ordered by yasu-san/text by あなたのペンネーム)
とつけてください。これはお題を出した人への礼儀と言うことで。
====================
◇ 三択問題
学習塾が小学校に言った。「なんていうか、おれたち本当に必要なのかな、二つもさ?」
「それって」小学校は警戒しながら答える。「どういう意味?」
「どういう意味も何も、可哀想じゃん、子どもたち。朝早くから学校行ってさ、一日授業やら何やらあってさ、それが終わっただけで十分集中力を使ってると思うんだよね。」学習塾は一言一言確かめるように口にする。「それが今度は夕方から塾だよ。そんなのどっちか一つでいいって」
「でもどっちかひとつ選べって言われたら」小学校を上目遣いに学習塾を見てそう言う。「みんなは塾を選ぶんだろ?」
「おいおいおいおい」学習塾は両手を大きく広げて肩をすくめる。「そりゃあないだろ。っていうかお前がそれを言っちゃあダメだろ。しっかりしろよおい」
「だって、みんな結局ペーパーテストの学力のことしか考えてないわけだし」
「だからさ。そうやってきょろきょろするからダメなんだろ? お前はお前でどーんと構えて、ペーパーテストの結果に一喜一憂するような家庭には来てもらわなくていい、くらいのことを言い放つべきなんだよ堂々と。だろ? そうすりゃその考え方についてくる人もいるって」
「いないよそんなの。ぼくにはわかっているんだ」小学校は暗い目つきをして言う。「ほんの数年前までゆとりが大事だゆとりこそ人生だと言っていたやつらはいまどこに行ったんだ?」
「まあまあ」学習塾は小学校の肩をポンポンと叩き激励する。「わかる人にはわかってるって。おれは応援しているんだぜ、結構お前のことを。というよりお前が頑張ってくれなきゃ張り合いもないしな」
学習塾と小学校は別れると即座に仲間に連絡を取り合う。学習塾は「小学校の奴、めげてるフリをしていたけどあれは芝居だな。もっと追い込まなきゃ。学力向上のニーズをもっとPRするんだ」と言う。小学校は「学習塾はほとんど勝ったも同然というつもりでいる。あいつらが大好きなマーケティング・データで、あいつらの足元に揺さぶりをかけるんだ。入試突破に最重要の力点を置いた児童が入学後に受動的にしか振る舞えないという事例を徹底的に掘り起こすんだ」
そのころどうしようもないど田舎の素寒貧の家庭の偏差値最低のクソガキは今年二頭目の鹿を仕留めて、刃物で胸を裂き心臓をつかみ大動脈の血流を止め、くるくると毛皮をはぎとり、運びやすいサイズまでばらばらに解体し、前近代的な迷信の作法にのっとって狩りの神様に祈りと獲物の一部を捧げ、毛皮と肉をまとめると山道を下るのに扱いやすいように天秤につるし里に下りる。死に際の鹿に引っかけられた傷を手当するための野草を摘み、ついでに鍋に入れる山菜も必要なだけ集める。「ケガなんかしやがって!」と病気の父親に罵倒されることはわかりつつ、鍋料理のことを考えると唾がわく。鍋料理の味付けには自信があるのだ。
さてここで問題です。切れ者の学習塾と、処世術に長けた小学校と、どうしようもないクソガキの中からひとりだけ、あなたがいざというときに頼れそうな友だちを選ぶとしたら誰を選びますか?
(「学習塾」ordered by yasu-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://hiro17911.asablo.jp/blog/2007/12/05/2472591/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。